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【インタビュー】マッサー赤星太朗

年間に何本ものレースに出場し
その一つ一つに全力を傾けて戦う選手達。

レースで力を最大限に発揮するためには
維持してきた肉体の管理とともに
精神的な要素も大きく関わってきます。
一種独特なムードに包まれる中、
選手が気持ちよくレースに臨めるよう陰で支えるのが
チームスタッフです。

その中でも今回は「マッサー」という仕事に注目!
愛三レーシングの国内外の国際レースにおいて
マッサーを担当する赤星太朗さんにお話を伺いました。


赤星太朗 TARO akahoshi
サッカーJリーグやアイスホッケー、フットサルなど
様々なスポーツのマッサーを経験。
2000年より愛三レーシングでもマッサーを勤める。

◆赤星さんのブログ『運動系癒し人?』もチェック!◆
http://tarooooooo.exblog.jp/

・・・

まさに目配り、気配りの仕事といえるのがマッサーの仕事。
自転車以外の様々なスポーツの第一線でマッサーを努め
その経験を生かし、チームを支えてくれています。

そのやりがいや苦労、チームに寄せる想いとは?
またここに、ひとつの厳しい世界を垣間見ました。


管理人
マッサーとして愛三レーシングに関わり始めたのは
いつからですか?

赤星
2000年のツールド北海道が最初で、
2001年と連続で参加しました。
その後自転車でないところでマッサーを続けていたんですが
2006年から再び参加、今年で北海道は4回目です。

管理人
これまでサッカーJリーグなど
第一線のスポーツの現場で力を発揮してきた赤星さん。
自転車競技のマッサーという仕事は
ご自身にとってどんなものなんですか?

赤星
自転車以外のスポーツの現場では
マッサーという仕事はそれだけで確立されている。
そしてそれ以外のことはチームとして役割分担されているんですよね。
すごく恵まれているなぁと思った。

でも自転車は違って、
マッサーとして体のメンテナンスから治療を行なうほかにも
補給食の準備から、レース中の補給まで行なう。
これは選手に関わることの全てが濃縮されています。

だからロードレースでマッサーとして行なう仕事を
ハイレベルにこなせれば
どの現場でもやっていけると感じています。
やりがいがありますよ。

管理人
去年のツールド北海道は西谷選手のリーダージャージを守るという
チームの使命を抱えながらのレースで
毎日相当な緊張感の中、進んでいったと思います。
今年は初日、2日目と選手が落車してしまい・・・
また違った状況の中、北海道のレースを迎えています。

チームにとっても北海道って重要なレースになっていますが
マッサーとして、北海道のレースを経験されていかがですか?

赤星
北海道は本格的なステージレースということもあり
バスで移動という日もありますが
基本は自分で車を運転し補給所まで先回りして、補給を行ないます。
まあ、ワンチャンスなわけです。

初めてこの北海道に参加したとき
最初の第1ステージの補給所まで間に合わなかったんです・・・。
ありえない出来事!
このときはさすがに申し訳なくて、へこみました。

そして去年の北海道です。
間にブランクがあったので、自分的にはほとんど初めてな気分。
そんな中、愛三はリーダーチームとして
西谷選手の個人総合を守っていく立場。
毎日が緊張の連続で、正直去年のことはほとんど覚えていない(笑)

管理人
レースは常に動いてますからね。
間に合わないって相当焦りますね(笑)
準備も色々大変だと思いますけど・・・その辺りはどうですか?

赤星
それでも日本のレースでは「なんとかなる」
っていう感覚はありますね。
だいたい何でも揃いますからね。

レースでは補給食の準備はもちろんですが
ドリンクの入ったボトルを選手に渡したり
レースが終わった後に飲む飲み物も準備するんですが
それらを最適な状態で渡すには
冷やしたりすることも必要なわけですよ。
そこで「氷」が必要になる。

日本ならどこでも手に入りますけど
海外のレースでは、結構過酷な状況も多くて
欲しいものが揃わないこと、よくありますよ。

今年中国でのレースがありましたけど、やっぱり氷が足りなくてね。
ボクは「氷ありますか」っていう中国語だけはしっかり覚えて(笑)
他のチームがいかないようなところまで捜し求めに行って
無事ゲット!苦労しましたよ〜〜

管理人
お〜〜!陰でそんな苦労があったとは・・・
やっぱり選手が一番いい状態でレースに臨んで欲しいですからね。
サポートもかなり気配りが必要になってきますよね。

赤星
そうですね。
「必要なものや最適な状態を、最適なタイミングで」
これが一番です。


人って自分の得意なことをやりたいじゃないですか。
実は自分はテーピングがものすごく得意なんですけどね(笑)
自転車では、テーピングをすることがないんですよ。
だから得意分野を発揮できない。
でも、それってやっぱり必要ないことなんですよ。
得意なことだからといってを押し付けてはいけないわけで。

何が今必要で、何を求めてるか
それに常にアンテナを立てて、判断しなければ。
そう思ってます。

管理人
色んなタイプの選手がいると思いますが
自転車の選手と、そのほかの競技を行なっている選手とでは
体も筋肉もだいぶ違うと思いますが。

赤星
そうですね。
自転車の選手は、筋肉が粘っこいというかモチっとしている感じかな。

ロードレースって、
体の状態が結果につながるとは限らないと感じています。
悪い中でも、いい状態にもっていくのがマッサーの仕事。
関節の動きをスムーズにすることで他への負担が減るので
いい動きにつながる。
そこは処置をする上で気をつけているところです。

管理人
色んな現場での経験が自転車でのマッサーの仕事に
生かされていますね。

赤星
例えば野球でデッドボールに合ったときの処置が
自転車の落車の手当てに生かせていたり、そういうのはありますね。
5月のツールド熊野のときの西谷選手の落車のときとか・・・。

今回の北海道では、初日に綾部選手が落車し
かなりのケガを負ってしまった。
初日は第1ステージのロードレースのあと
間3時間くらいで続いて
第2ステージのタイムトライアルがあったんですが、
レース前には動かせない状態だったんです。
※ステージレースでは、一度リタイアした場合
 次のレースには出られません

このときは体の色んな箇所を痛めていたんですが
その中でも優先的に処置していかなければいけない部分を
重点的に処置していった。

ところが2日目、マークしていなかった部分が痛み出してしまった。
結果としてリタイアとなってしまった。
これは今後の課題になりました。

ベストはないし、同じ状態というものはないと思う。
そしてマニュアル化できるものではない。
でも、そこを突き詰めていかなければ
本気で走っている選手達に失礼だと常に思っています。
これまでの経験をもっと生かして
チームの勝利の一助になれればと思っています。  

・・・

毎回レース会場に行くたびに
選手のすごさはもちろんですが
選手をささえるスタッフの仕事を目の当たりにします。
決して目立ちはしませんが、このひとたちがいなければ
選手はやっぱり戦えないんだよなぁと感じています。

今回赤星さんのお話を聞いて
「ロードレースのマッサーは濃縮されてる。
 ここでハイレベルな仕事ができたら、どの競技でもやっていける」
っていうのが一番印象的でした。

自転車っていうのは、様々な要素が詰まっていて
一筋縄ではいかない競技なんだなぁって、改めて感じます。
マラソンのような持久力が必要だけど
自転車というものを介して競技しているので
危険も多いし、ケガもときに命を落とすことだってあるし
瞬発力も時に必要なので、体もうまく使っていかないといけないから
メンテナンスも大変だよなって。

そんな選手を一番いい状態に持って行き
レースが終わったあとも次の日に向けて回復をはかり
また明日への準備も万全にしていかないといけない。
自転車のメンテナンスや洗車をするメカニックの方の仕事ぶりも
毎回見ていて頭のさがる思いですし
マッサーの仕事もな〜、大変だよな〜って、改めて。

「この世界でマッサーとして頑張る人が出てくるといいな」
そういってました。
選手の体を預かる責任重大な仕事だけど
ともに戦う一員として、誇りを持って臨んでいるマッサーは
やっぱりカッコイイです。
こうやってチームを支えてくれているんだなと
改めて感じることができましたし
これから、この世界に触れてくれる人が増えたら嬉しいなと思いました。

私もそんな風に感じてもらえるような仕事をしていきたいな。
またひとつ、自転車から教わりました。

ということでこのインタビューをもって
「ツールド北海道2007」関連の記事は終わりです!
いろんな角度から、ロードレースの魅力を感じていただけたなら幸いです。
読んでくださってありがとうです!