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【インタビュー】別府匠選手

いよいよ明日20日、大阪ステージを皮切りに7日間行なわれる
ツアーオブジャパン。

選手、監督スタッフ一同、無事に大阪入りをしたそうです。
明日の天気はよさそうかな?
いい滑り出しを期待したいですね!

さて、今回のインタビューは、愛三レーシングの中心選手、
エース、アシストとして様々な役割をこなす、別府匠選手です。

2004年のツアーオブジャパン 奈良ステージで、
日本人4人目となる区間優勝を獲得、
その結果、日本人初となる「グリーンジャージ」を着用。
その成績から、TOJというレースにおける別府選手への期待が
毎回寄せられていますよね。

今回のレースへの思いを聞きました。

さあTOJ目前ですが・・・どうですか?調子は。

別府
うーん。軽く焦ってます。なんだか時間がないような・・・。
でも気持ち的には、わくわくしてる感じですかね。


今日は富士山に上ってきたそうですが。

別府
先日の「ツールド熊野」が終わってから、今週末のTOJまでの今週は
奈良・新設の美濃、そして富士山を試走しました。

今日の富士山は・・・
思いのほかきつかったですけどいい感じに上れたと思います。
改善点もみつかったし。
なにより、気持ちの整理がついたのが、一番の収穫かもしれません。


そうか・・・。
力も大切だけど、やっぱり気持ちのほうも大切ですもんね。
その「富士山」ですけどやっぱりTOJでは富士山は重要なんですよね?


別府
そうですね。一気に差が開きますから。


富士山ステージは、
ふじあざみライン入り口からスタートし、
富士山須走口5合目までの11.4キロの個人タイムトライアル。
標高差は1200メートル。だいたいどれくらいで上るんですか?
タイムってあまりかわらないものなの?

別府
一番速い人で、40分。
日本で一番速いのはシマノの狩野選手で42分台。
僕は、44分でしか上ったことありません。
実力がはっきりでますね。あとステージこなしてきた終盤なんで、
なかなか難しいです。

でも、タイムトライアルなんで集中して走れますね。
上りが得意な選手っていうのは、自分のペースがあるんで、
それでいければタイムに現れてきますね。


今日上った感触はどうでした?


別府
結果50分くらいで上ったんですけど結構気楽に上れたし
そんな準備していったわけでもなかったんで
こんな感じで50分なら、本番はもっといけるかなと。
ギヤも一枚重めだったし。


その他のコースを試走した感触は?


別府
相変わらずだなぁ〜と。
ま、変わるわけはないんですけどね(笑)

新設の美濃ステージは、単調だけど結構難しいんじゃないかと感じました。
平坦が長いステージって、逃げが決まりやすい。
集団も気を抜いてしまうんで・・・。
でも前の集団のがんばり次第で、差はいくらでもなるから。


大阪、奈良、ときて、今までは信州、だったところに、美濃が入る。
それについてはどうですかね?


別府
従来より移動はきついですけど、
ステージレースは本来続くのがあたりまえなんで。
あと、距離も長くなる。皆の動きが楽しみですね。

間に美濃ステージが入ることで、レースの状況も変わってくるでしょうね。
でもそれはまだ誰にも分からないんで。お楽しみですね(笑)

今回で、TOJ出場は何回目になるの?ステージとったのはいつだっけ。

別府
NIPPOのときに2回、愛三にきて3回目、
今回で5回目の出場ですね。
奈良ステージとったのは、3回目のときです。


あれがあって、その後の競技生活も大きく変化したと思いますが。
TOJといえば、別府選手に期待がかかる、
それについては正直どうなんですか?


別府
奈良ステージ優勝したあと、富士山ステージが追加されて、
よけいに総合に残りやすくなった。
でも僕も、結構いっぱいいっぱいで走ってるんですよね。
奈良で優勝した年は、たまたまレベルが低くて
優勝できたってのもあるし・・・。

それで総合もとってたら、その後はまた話しは変わってくるんだろうけど。
そうは簡単にはいきません。
中途半端だから、目標が増えていくって感じです。


中途半端?


別府
TOJ総合優勝できなかったことや、U23で全日本とれなかったこと
NIPPOでヨーロッパ活動できなかったこと・・・。すべて中途半端。
だから、もっとやらなきゃ、そう思う。

自分でいうと認めてるみたいですけど、
あんまり優勝するイメージってないんですよね。
才能とかそういうのとは無縁でやってきたから。

僕が勝つときは、だいたい独走とかだし、力の差がないと勝てない。
だから人一倍やらないと勝てない。
勝つためには差をつけることだから、それをやらなきゃと思わされる。


そうか・・・。
よくも悪くも、優勝という結果が出たことでその後に大きく影響してるんだ。
そういう意味では、やはりTOJは特別なのかな?


別府
まあ、成績も出ますし自分向きのコースだし、
TOJに関しては愛三で一番頼られてますからね(笑)
要は富士山を上れるってことになるのかもしれないですけど
持ち味を生かせるレースではありますね。


今回のTOJはどんな風に戦いたい?


別府
自分の走りもそうですが、
今回はうちのメンバーで区間優勝取れたらと思ってます。
そういうバランスはとれていると思うから。

みんな強いんで楽しみな部分もありますが、
僕も今年は積極的にいきたいと思ってます。
できれば。


できれば、なの?


別府
うーん・・・。正直まだ状態がよくわかんないんですよね。
今年はレースが少なすぎて・・・。

2年前はヨーロッパにいってたし、
1年前はアジアを回っていたんでレースを走ってましたけど
今年は台湾で落車してレースを棒に振ってるし、
ケガの具合で練習うまくできなかったんで。

でもやはりこれまでどおり、総合の成績は大事と思ってます。
ただ、今までは守ることで精一杯だったけど、
今回は仲間もいるし
少し攻めていけるかなぁと思ってます。


思うんですけど、一度大きなレースで勝つと、
本当にずっと影響していくんだね。


別府
そう。それが自転車のすごいところ。
しかも日本人で初めてとかだとね。
自分は4人目の区間優勝者で、それ以降でてないわけで。
グリーンジャージ着たのも初めてだし。

僕は、高校時代とかヨーロッパ行ってるとき、
成績なんかなんにもなくて。
普通の人が走ってるって感じで、いつやめるの?って感じだったのに
努力したら報われたような気持ちがしてる。

だから、「みんなできるよ」って言いたいし、そう思う。
それはフミ(別府選手の弟、別府史之選手)と同じ気持ちなんです。

彼は自分がプロとして走っていることで、
みんなもできるよっていうメッセージを送っている。
それと一緒なんです。

ツアーオブジャパンだって、日本人がもっと活躍できるって思ってます。


・・・


私がロードレースを初めて見たのが、
去年のツアーオブジャパン東京ステージでした。

レースを見にいきたい!
そう思ったきっかけは、2005年のTOJを録画したビデオでした。

2004年に奈良ステージで優勝した別府選手。
優勝した翌年、誰もが別府選手に「次も狙える」という期待をもち、
私がみた番組は、別府選手ら、日本人選手に密着した内容でした。

中でも印象に残っていたのが、富士山を上る姿です。

富士山は登山したりするものと思ってた自分には
自転車で上ることに普通に驚きました。

タイムを言われても、どれほどすごいことなのか正直分かりませんが
富士山を上っている選手の走り方を見て、
自分が坂を自転車で上った経験を思い、
んな早く走れっかい!と思ったので、
それだけで、十分すごさが伝わってきました。


一度勝った人に、次を求めるのは、
ごく自然な、人の心理だと思います。
そして、選手は勝ちたい、そう思っているものだと思っていました。

でも、別府選手と話していると「勝つ」ということってなんだろう?
そんな風に思ったりするんです。

勝ってナンボの世界にいる人に思えないときがある。
そんな風に問いかけてみたら
勝ちたい、という言葉じゃなく
「負けたくない、はある」という言葉が出てきました。


でも。
チームで勝つために
見えるシーン、見えないシーンで走りぬく別府選手の姿も、知っています。


勝利というステイタスと、今自分がいる環境、実力、理想。
選手はきっと、その狭間をいつも揺れ動きながら、
自分の力を磨き、表現し続けるんだと思います。

何度話していても、どう思っているのか、
本当の気持ちを話してくれることはないでしょうね。
(インタビュアーとしては失格かな)

でも、それでいいのかもしれないなんて思ったりもします。

なぜなら、
レースで見せてくれる、そのパフォーマンスが、全てですもんね!

答えはきっと自分自身にも分からない。
感動は、レースの中にしかないのですから。
思いが結果に結びつく、その瞬間が見られたら最高です。


今年のツアーオブジャパン、いよいよ明日20日開幕です。
応援に行かれる皆さん、どうぞ楽しんでください。

たくさんの、
素晴らしい選手の思い切りのパフォーマンスを感じてください!


・・・


 別府 匠  Takumi BEPPU
 1979年9月29日生 27歳

 高校卒業後、フランスに自転車留学。
 6シーズンヨーロッパでレース活動し
 2004年愛三レーシングに移籍。
 2005年実業団ランキング1位。

 選手生活9年を迎え、チーム内では、
 欧州での経験と豊富なレース経験を生かし、若手育成にも励む。