REPORT

ツアーオブチャイナ 総評

ツアーオブチャイナ 
UCIアジアツアー2.1

全9ステージ 全長1416km

期間
9月9日~9月20日(9日間、移動日2日)

場所
中国 西安、綿陽、重慶、成都、天津など
 
出場チーム

プロフェッショナルコンチネンタルチーム
Team Type1-Sanofi(アメリカ)
Andalucia Caja Granada(スペイン)

コンチネンタルチーム
愛三工業レーシング(日本)
Nurtrixxion Sparkasse(ドイツ)
Velo-club La Pomme Marseille(フランス)
Perutnina Ptuj(スロヴェニア)
Joker Merida(ノルウェー)
Glud&Marstrand-LRO(デンマーク)
Atlas Personal-JAKROO(スイス)
V Australia Pro Cycling Team(オーストラリア)
Principal-MTN Qhubeka Cycling Team(南アフリカ)
Tabriz Petrochemical Team(イラン)
Giant Kenda Pro Cycling Team(台湾)
Champion System(香港)
Max Success Sports(中国)
Holy Brothers(中国)

ナショナルチーム
China National Team
Dutch National Team
Russia National Team
USA National Team
Korea National Team
China Hong Kong Team 

以上 22チーム

愛三工業レーシングメンバー
綾部勇成
西谷泰治
鈴木謙一
盛一大
中島康晴
伊藤雅和


今年愛三工業レーシングとして初めてツアーオブチャイナに出場しました。9月は2011年度のUCIアジアツアーチームランキングを決める最後の月になるので、上位に入るために重要なレースでした。UCI2.1カテゴリーは個人総合優勝で80点、区間優勝で16点、リーダージャージ着用で8点獲得でき、UCI2.2に比べると倍の得点を獲得することができます。 

参加チームは全22チーム。カテゴリーが高いので、スペイン・スロベニア・ドイツ・フランス・ノルウェーなどのヨーロッパ勢を始め、アメリカ・オーストラリアなど欧米のチームが多く顔を揃えました。アジアからはランキング上位のTabriz Petrochemical Team(1位)、Giant Kenda Team(4位)、愛三工業レーシング(6位)が出場。そして地元中国からはMax Success Cycling、China National Team、Holy Brothers、さらにChina Hong Kong Teamが出場していました。

レースの行程は、西安・広安・綿陽・重慶・成都など歴史的に有名な都市を経由して、最後は飛行機で天津に渡り天津駅前をゴールするクリテリウムでレースを終える9日間の壮大なレースでした。

愛三工業レーシングの今回のレースの目標は総合10位以内に1名以上入れること、そして区間で勝てるだけ勝つこと。2度の山岳コース以外はほぼフラットのレイアウトだったので、チームでまとまってゴールスプリントを狙えれば狙えるし、またレースの状況でリーダーチームが逃げを容認すれば逃げ切りで区間の勝負をできる可能性もあるので、逃げにも最低1名入れること。また山岳コースでは上りきってからほとんど下りでゴールするため、ある程度人数を残せれば総合も区間も両方狙うことができたので、山で遅れないことを念頭においた作戦でした。

総評ですが今回のツアーオブチャイナは第2ステージですべてが決まってしまいました。第2ステージは100km以上におよぶアタック合戦の末、2名の選手が集団を抜け出したのを集団が容認。そしてメイン集団は追走をしたものの、タイム差の情報不足や有力チームのつぶし合いによって3分近い差で逃げ切られてしまいました。

そして第3ステージの山岳コースで、有力チームが総攻撃をしたものの、逃げに乗っていたうちの1人のGiant Kenda Teamの選手が、先頭集団でゴールしたので総合1位はほぼ確定になっていました。そこからは各チームも総合逆転をかけてのレースをすることになりました。
Giant Kenda Teamのチーム力はそこまで強くなかったので、チームを崩壊させて総合逆転することは可能と考えられていましたが、チーム力のないGiant Kenda Teamは集団を積極的にはコントロールせず、すべてを成り行きに任せてレースをしていました。そして今回の参加しているチームの実力差が拮抗していたことも幸いして、毎ステージ決定的な逃げはほとんど決まらず、最終的にスプリンターのチームが集団をコントロールするという、すべての動きが結果的にGiant Kenda Teamを助けてしまうことになっていました。これもすべて第2ステージで大きく逃がしてしまった結果が招いているものなので、その時点でもうすでに各チームは総合2位狙い、もしくは区間狙いにスイッチしていたのかもしれません。

愛三レーシングはフラットステージでは逃げも反応しながらゴールスプリントも狙いました。逃げには西谷選手、中島選手、伊藤選手をメインで対応して、スプリントは西谷選手、盛選手、綾部選手で対応しました。

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第2ステージで大きくタイム差をつけられてしまったので、第3ステージで総合上位に人数を送り込んでレースを優位に進めていく予定だったのですが、6名中の5名が遅れてしまったことにより総合は唯一先頭集団で乗り切った鈴木選手1本勝負になり、残りの選手たちは区間優勝だけにフォーカスしてレースを走る作戦になりました。第2ステージに関して言えば、中島選手がその直前のアタックに反応していて、その直後のアタックが決まったので、単にタイミングの問題だったのかもしれません。あとは自分たちより経験も力もあると思われた欧米系のチームが強力な追撃をするだろうと考えていたのですが、結局うまくいかず各チームが高をくくったのがよくなかった点でした。それくらいいろんな意味でチームの実力が拮抗していたのだと思います。

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第4ステージでは214kmのレースの中で全く逃げが決まらず、アタック合戦のままゴールに向かいました。最後は盛選手が残り10kmから抜け出しを試みましたが、残り2.5kmで吸収。もしかしたらこのアタックが一番長く続いたかもしれないくらいです。
選手たちは200km以上走って逃げが決まらなかったは初めてだったと口々に言っていました。

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第5ステージから第7ステージまでは4~5人程度の逃げができて、最終的に区間優勝を狙っているTabrizチームがコントロールしてレースをまとめるという展開で、ゴール前で各チームがトレインを組んでゴールスプリントになるパターンでした。愛三もトレインを組んでゴールを狙いました。西谷選手が第5ステージで2位に入ったのが最高位でした。他のステージでは他チームとの位置取り争いや小競り合いで位置がうまく維持できず、スプリントに入ることができませんでした。

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体格のよい欧米の選手たちと真っ向勝負でスプリントするのは身体の小さい日本人にとってが難しいことですが、難しいことが簡単になった時は勝利を量産できるときと信じています。挑戦できる限りこの形で挑んでいって、今回は残念なことが多かったですが、2010年のツールドランカウイ、2011年のツールド熊野のように、勝利の形をものにできたらと考えています。

そして今大会のクィーンステージになる第8ステージで、鈴木選手が先頭集団に残って区間5位に入り、自身初となるUCIポイントを獲得しました。これで愛三工業レーシングは2011年に加入した新人を除くすべての選手がUCIポイントを獲得したことになります。これはチームとして進歩したと言えることでしょう。

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最終ステージの第9ステージでは天津の駅前ゴールという素晴らしいロケーションでのレースになりましたが、レースはラスト1周の最終コーナーで落車した選手が滑っているときに西谷選手に接触。西谷選手も落車に巻き込まれてチームとしてまともにスプリントができませんでした。愛三の最高位は盛選手の10位でした。

今回のレースはうまくいかないことが多く、欧米の選手とアジアの選手が均等に混じった時のレース展開の難しさを感じました。そこまで変わらないレベルでもレース展開の考え方などが違ったりします。それもあるので愛三レーシングはある程度自分たちの形を持ってレースをしていますが、今回はより先を、周りを見てレースをしなければならないことを感じました。また欧米のレースを経験することも、この先より規模を増しているアジアツアーに挑戦しているチームにとって大切だとも感じました。今度チャンスがあり、しっかり準備ができればチャレンジしていきたいと思います。

次回参加するレースは10月20日から28日まで中国・海南島で行われるツールドハイナン(UCI 2.HC)と10月23日に栃木県・宇都宮森林公園で行われるジャパンカップ(UCI 1.HC)です。愛三工業レーシングは2チームに分かれてアジアのハイクラスのレースに参加します。この10月から2012年度のUCIランキングはスタートするのでスタートからポイントを稼ぎ、2012年のシーズンによい感触でつなげて行きたいと思います。

これからも応援よろしくお願いします。

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ツアーオブチャイナ 成績

区間成績(上位者のみ)
第1ステージ 11位 盛一大
第2ステージ   8位 盛一大
第3ステージ 40位 鈴木謙一
第4ステージ   9位 西谷泰治
第5ステージ   2位 西谷泰治
第6ステージ   30位 鈴木謙一
第7ステージ 10位 西谷泰治
第8ステージ   5位 鈴木謙一
第9ステージ 10位 盛一大 

個人総合
1位 Muradjan Halmuratov (GKT)
2位 Ivan Kovalev (RUS)
3位 Alexander Serov (RUS)

20位 鈴木謙一
42位 西谷泰治
75位 伊藤雅和
77位 中島康晴
84位 綾部勇成
96位 盛一大
出走129人/完走112人

チーム総合
15位/22チーム

 

ツアー・オブ・チャイナ特設ページ
china2011
2011年9月9日〜9月20日 UCI AsiaTour 2.1

cyclowired.jp でも連日現地レポートが掲載されました。

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