REPORT

2010ツールド北海道 第4ステージ(最終日)

9月16日函館市でのプロローグでスタートし20日札幌市のクリテリウムまで
5日間の日程で開催された「ツール・ド・北海道」が終了しました。
結果速報でお伝えしたとおり愛三レーシングチームは綾部勇成選手の個人総合4位が最高成績で今大会を終えました。

ツール・ド・北海道は広大な北の大地を駆け抜ける本格的なステージレース。タイムトライアルやラインレースを交え起伏に富んだコースの攻略を各チーム練っていく「チームの総合力」が問われる大会です。
日々の順位とタイム差を積み重ねていき一番速い選手が手にする「個人総合時間賞」。そしてリーダーの証である「グリーンジャージ」。
どのチームもこれを目指し日々戦っていきます。

今年の愛三レーシングは、チームのキャプテン綾部勇成選手をエースに置きました。綾部選手をアシストするのは、過去に個人総合優勝も果たしている前日本チャンピオン西谷泰治選手、北海道ではステージ優勝も経験しスピードを武器に戦う盛 一大選手、アジアツアーでタフに鍛え抜かれた献身的なアシスト力が光る鈴木謙一選手、若手ながらレース経験もある実力者 福田真平選手という布陣です。

各レースで力強いアシストでチームメイトを支える綾部選手が今回はエース。愛三レーシングは綾部選手を総合上位にからめる走りを最後まで見せてくれました。
これから最終日第4ステージのリポートをお伝えしますが、選手たちが積み重ねてきたドラマを振り返ることで最終日の走りの意味を感じて頂けるのではと思います。長くなりますがご覧頂ければと思います。


ツール・ド・北海道2010(UCIアジアツアー2.2) 
第4ステージ クリテリウム 63km(札幌市モエレ沼公園)


最終日の朝、濃い霧に包まれた会場のモエレ沼公園
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9時スタートにむけて準備を進める選手、スタッフ達
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今年の北海道でエースを任された綾部選手
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初日プロローグ 個人タイムトライアルでは西谷泰治選手が本領を発揮し見事優勝、グリーンジャージを獲得する幸先の良いスタートを切りました。第1ステージは218kmのロングステージ。リーダーチームとして終始集団をコントロールしていく厳しいレースとなりました。最後はスプリントとなりエース綾部選手がステージ6位、タイム差はなかったものの着順のボーナスタイムで総合順位が入れ替わりました。愛三としては綾部選手での勝負を目標にほぼタイム差のない状態で「山場」と言われていた第2ステージを迎えます。

大幅なタイム差がつく可能性のある山岳ステージは総合順位を決定付けるステージにもなり得ます。第2ステージは3つの山岳ポイントを含む186kmです。愛三レーシングはチームメイトのアシストをしっかりと受けた綾部選手が、最終局面で6分以上のタイム差をつけた逃げの8人に乗ることに成功。ゴール前の長い上りで遅れたもののステージ4位に入り総合圏内をしっかりとキープ。翌日の最後の山岳ステージに望みをつなげました。

第3ステージは標高約880メートルの「オロフレ峠」を含む169km。総合1位のBSアンカーと2位のチームニッポがタイム差5秒の僅差、BSの集団コントロールの中レースが展開されます。愛三レーシングは盛選手が逃げに乗り展開を物にしようと試みますが、最後は総合に関係のない5人が逃げ切り集団はタイム差なしのゴール、総合順位に変動はありませんでした。

ここまででトップはBSアンカー清水選手、5秒差でニッポ佐野選手、3位韓国のチョイジュンギュン選手が14秒遅れ、綾部選手は23秒遅れで4位、そして同じく23秒遅れでシマノ村上選手が5位と、愛三としては3位から5位までが僅差という形で最終日を迎えます。


スタートの時間には青空が広がり気温も上がった
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最終日は1周4.17kmを15周する63kmのクリテリウム
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コースレイアウトが変わった今年のモエレ沼公園
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最終日はモエレ沼公園、平坦のクリテリウムです。
ここで重要になるのが「ボーナスタイム」。この北海道では各コースに「ホットスポット(HS)」と呼ばれるポイントがあり通過順位で「ボーナスタイム」が与えられます。これを稼ぐことでタイムを縮めることができます。またゴールの着順でもボーナスタイムがあり1位は10秒与えられるので総合の僅差逆転も狙うことができます。

途中少人数の逃げはできるものの最後は集団ゴールでタイム差がつかず前日までの順位で優勝が決まるというのが通例となっていましたが、昨年は秒差で最終日を迎えあわや総合入れ替わりか?という場面もありました。今年も最終日まで気を許せない状況です。またフラットなクリテリウムなので総合圏外のチームはステージ優勝も狙ってきます。様々な思惑が入り混じったまま迎えた最終ステージ、大きなタイム差をつけて逃げ切る以外には総合優勝は難しい上に簡単には逃がしてはくれない状況。愛三レーシングは9秒差に付けている3位のチョイジュンギュン選手(韓国)を逆転し綾部選手の表彰台3位へのジャンプアップを狙うレースとなりました。


盛 一大選手
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鈴木謙一選手
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西谷泰治選手
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エース 綾部勇成選手
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いよいよ最後の戦いが始まる
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作戦としては、15周回のうち3回あるHSの中でも3周回目に設定された最初のHSで3位以内で通過しタイム差を縮め、最後のゴールでのボーナスタイムに狙いを定めていくこと。西谷選手のアシストを受けた綾部選手が最初のHSを3位で通過、1秒のボーナスを稼ぎます。
その後レースはリーダーチームのBSアンカー、2位チームのニッポが協力しあい集団をコントロール、愛三は展開を見据えながら最終局面に備えます。レースは予想通り総合に関係ない6選手を含む逃げができ集団は30秒ほどの差をキープしながら周回を重ねていきます。


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HS争いでは西谷選手のアシストを受け綾部選手が3位通過
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6人の逃げ
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メイン集団はBSアンカーとチームニッポがコントロール
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盛選手、綾部選手、鈴木選手
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鈴木選手
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西谷選手
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スタッフはコース内に散らばりアクシデントに備えます
メカトラでリタイアした福田選手もスタッフとしてチームを支えます
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アートに溢れるモエレ沼公園にレースという彩りが加わる
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レースが動いたのは残り3周回。これまで一定のタイム差を保っていたメイン集団がスピードを上げ始め、残り2周回の終わりには6人を飲み込みます。ひとつの大きな集団となった最終周回、勝負を決めるゴールスプリントに会場は沸きました。最終ステージを制したのは第1ステージも優勝した韓国のパク選手、2位にシマノ鈴木真理選手、3位ニッポ宮澤選手という結果。タイム差なしの集団ゴールでBSアンカー清水選手の総合優勝が確定、2位、3位も順位は変わらず。綾部選手はこのステージ6位となり逆転はならず総合4位でフィニッシュとなりました。


最終周回に向かう愛三レーシング
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ゴールを制したのは第1ステージを獲ったパクスンベク選手(韓国)
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戦いを終えた選手たち
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●今回エースを務めた綾部選手のコメント
初日プロローグのタイムトライアルで「やっちゃったかな」という出だしだったので不安はあった。夏場の絶不調を乗り越えて調子も上がってたと思ったので・・・。リーダーチームとなった翌日の第1ステージは200キロを越えるロングステージだったがチームの皆の走りに助けられて最後で動いたのみだったので脚を残すことができた。

今大会の山場となった第2ステージは勝負どころと認識していたし、総合争いは横一線だったので集中して臨んだ。前日の集団コントロールでアシストの盛・鈴木・福田はかなり足を使っていたし西谷と自分しかさら足がいなかったので逃げには積極的に乗っていこうと思い前々で走った。ラスト50キロくらいでアタックがかかったときもしっかりと乗って決まったからうまくいったと思う。しかし表彰台を狙ったが結果は4位。かなり悔しかった。

第3ステージは最後の山岳で攻めたかったけどオロフレ峠で足にきてました。でも遅れたら元も子もない・・・。正直やばかったし遅れそうだったけど集中していくしかないと気を引き締めました。第2ステージが終わった時点で自分は総合4位、3位とも5位とも僅差で攻め方は難しかったと思う。このステージでは盛が逃げたのでこれを生かし総合を狙って勝負できたらとも思ったが叶わなかった。

最終日は3位とのタイム差で逆転表彰台を狙うためホットスポットでのボーナスタイムを狙っていった。3位以内での通過は絶対条件。最後はゴールを獲りボーナス10秒で逆転することを目標に走った。実際予想通りの展開だったがステージ6位、総合4位で大会を終えることになりました。
エースとして参加したからには表彰台に乗りたかった。第2ステージの上りゴールで3位までに入れなかったのはやはり大きかったし悔しかったです。
チームの皆はしっかりと自分の走りをサポートしてくれたし、第3ステージの昨日も西谷が自分のすぐそばにいてくれ戦うことができた。第1ステージでかなり楽できたことは第2ステージの逃げ切りの結果に結びついたと思うし、それが最後まで総合を位置づけることになった。ただ、いい面にも悪い面にも響いた攻め方の難しいレースになったと思う。
次のレースは「ツール・ド・ハイナン」です。ランカウイ以来のハイクラスのレースなので、チームとしてひとつでもステージで勝てるように頑張りたい。


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●ツール・ド・北海道2010 田中監督の総括
今年の北海道はエース綾部で挑みました。プロローグで西谷が優勝し幸先の良いスタートが切れ、第1ステージは盛・鈴木・福田が集団をコントロールしてタイム差なしでゴール。ボーナスタイムでリーダージャージは入れ替わったが今回の勝負どころは第2ステージだったのでまずまずの形で迎えることが出来た。

第2ステージでは綾部が8人の逃げグループに入り4位でフィニッシュ、総合も4位に上がった。第3ステージは途中愛三にとっては不利な展開にはなったが西谷と鈴木がメイン集団のペースを上げ逃げを吸収、最後は5人に逃げ切られたが綾部の総合順位は変わらず最終日を迎えた。

最終ステージは綾部の総合順位を一つでも上げられるように選手たちは力を振り絞って戦ってくれた。結果総合をあげることはできなかったが、綾部自身過去最高位である個人総合4位で大会を終えることができた。綾部は今回エースとして今持てる力を十二分に発揮してくれた。また西谷・鈴木・盛・福田の4人は綾部を力いっぱいアシストしてくれた。
この大会でまたチーム力が高まったと実感しているし次のレースに繋げられることができたと思う。


〔ツールド北海道2010 最終結果 個人総合時間〕
1 清水 都貴(チームブリヂストンアンカー) 16:05:51
2 佐野 淳哉(TEAM NIPPO) 0:05
3 CHOI Jong Gyun(大韓民国チーム) 0:12
4 綾部 勇成(愛三工業レーシングチーム) 0:22
5 村上 純平(シマノレーシング) 0:23
6 PÖLL Stefan(ARBÖ-KTM) 0:43
7 内間 康平(鹿屋体育大学) 0:52
8 狩野 智也(チームブリヂストンアンカー) 1:06
9 FENG Chun Kai(アクションサイクリングチーム) 5:15
10 YOUM Jung Hwan(大韓民国チーム) 5:16

15 盛 一大(愛三工業レーシングチーム) 6:24
16 西谷 泰治(愛三工業レーシングチーム) 6:26
59 鈴木 謙一(愛三工業レーシングチーム) 26:02
メカトラによりDNF 福田真平


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なお今年のツールド北海道のアレコレは「ディアサポーターズ」でも書きたいと思います。お楽しみに!

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